今回ご紹介する時計修理事例は、IWC・インヂュニア(型番:5408221)。ドイツ語で「エンジニア」を意味するその名のとおり、1950年代の機械工学分野の発展とともに生まれた、高磁場環境で働く人々のために開発されたモデルです。機械式時計の弱点である磁気の影響を克服したコレクションとして、IWCを語る上で欠かせない存在です。
起源は1955年にさかのぼり、主に医師や放射線技師など、電磁波の影響が懸念される特殊な職業の方々に長年愛用されてきた歴史があります。1970年代には伝説的な時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタが手掛けたデザインを現代的に再解釈し、現行モデルへと受け継がれています。耐磁性能と耐衝撃性に優れた実用性の高さに加え、近年ではパーペチュアルカレンダーやトゥールビヨンといった複雑機構を搭載したモデルも登場するなど、そのラインナップはますます広がりを見せています。
オーナー様からうかがったご依頼内容は、「カレンダーに不具合が出ているので直してほしい、オーバーホールもお願いしたい」というものでした。長年大切に使われてきた時計ならではの、経年による内部の消耗が原因と見受けられます。
まずはお預かりした時計を分解し、すべての部品を専用の洗浄装置で丁寧に洗浄します。時計の内部には、オイルが蒸発した残りかすや、油切れによって金属同士が擦れ合って生じた微細な粉末が少しずつ蓄積していくものです。こうした汚れをしっかり取り除いてから、各部品の状態を一つひとつ確認していきます。
点検の結果、ゼンマイの劣化が認められたため交換いたしました。また、カレンダーの不具合の原因として、カレンダー送り車(日付を一日ずつ送るための歯車)の摩耗が確認されましたので、こちらも新しい部品と交換しています。部品の交換にあたっては、事前にオーナー様へご確認いただいた上で作業を進めております。
すべての部品を洗浄・点検・交換したのち、注油しながら丁寧に組み立て直し、精度の確認と各機能の動作チェックを行いました。カレンダーの送りもスムーズに動作することを確認し、本体の仕上げ作業へと移ります。
最後に研磨仕上げを施し、ケースのくすみや細かな傷を取り除きました。磨き上げられた外装は、年月を経たとは思えないほどの輝きを取り戻しています。
このたびはご利用ありがとうございました。
【修理費用内訳】
・分解調整(分解、洗浄、調整、注油、組立、点検) 一式 48,000円(税抜)
・ゼンマイ交換 7,000円(税抜)
・カレンダー送り車交換 10,000円(税抜)
・研磨 14,000円(税抜)





