IWC時計に定期的なオーバーホールが必要な理由は?

数ある高級時計ブランドの中でも人気の高いIWC。時計修理工房にも毎日のように多数のIWC時計修理のご依頼を頂きます。
皆様の大切なIWCをより長く、美しい状態でお使いいただくために、当店では定期的な「オーバーホール」をおすすめしております。すでによくご存じの方も多いかもしれませんが、今回はIWCのオーバーホールの必要性について改めて確認していきたいと思います。

オーバーホールとは

「オーバーホール(overhaul)」とは時計のメンテナンスや修理の一種で、分解修理とも呼ばれます。時計全体を部品単位まで分解した後、各部品を洗浄し、必要に応じて修理や交換を行い、元通りに組み立てるまでの一連の作業がオーバーホールです。
詳しくは後述しますが、腕時計はオーバーホールによって新品時の精度や性能を取り戻し、時計の寿命を延ばすことができます。

オーバーホールの手順

オーバーホールを行う一般的な手順は次の通りです。この基本的な流れはどのブランドの時計でも違いません。

①状態の確認

オーバーホールを行う前に、目視で時計の状態確認を行います。
ケースや鏡面の傷、リューズの出し入れや針・カレンダーの動き、ベルトの可動部分、バックルの脱着など、どんな異常があるのかを一つ一つ確認していきます。

②時計の分解

腕時計を細かなパーツに分解していきます。
まずベルトを外し、次に専用の工具で裏蓋を外し、針と文字盤を外し、ケースからムーブメント(駆動をつかさどる部分)を取り出して、ムーブメントを分解していく、というのが基本の流れです。

このプロセスでは非常に繊細かつ専門的な技術が必要です。何しろ歯車1つ異常があっても時計は動きませんので、時計の構造やメカニズムに応じて慎重な作業が求められます。また分解しながら、各パーツに摩耗や損傷がないかの状態チェックも行い、修理・交換が必要な部品を特定します。

③部品の洗浄

分解したパーツを、特殊な溶剤や超音波洗浄機を使用して洗浄します。
部品に付着した汚れや老廃物を取り除き、部品の状態を回復させることが可能です。なお各パーツは非常に小さいため、洗浄専用のバスケットに入れてから洗浄機にセットする必要があります。

④時計の組み立て・注油

洗浄を終えた各パーツを、再び元通りに組み立てます。
基本的には時計を分解した時と逆の手順になります。もちろん分解時と同様、精密な作業や調整が必要です。この時に各パーツに摩耗や損傷がないかの状態確認も行い、必要に応じて修理・交換します。
また組み立てと並行して、適切な部位に特殊な時計用オイルを注油します。これによりムーブメント内部の摩擦が軽減され、時計の動作がスムーズになり精度が向上します。

⑤性能テスト

時計が組み立てられた後、専用のテスターを使って精度のチェック・調整を行います。
文字盤上・文字盤下・3時下・9時下・12時下の5通りの姿勢で、遅れ、進み、振り角、片振りなどのタイミングを微調整していきます。

また、腕時計用の防水試験器を使って防水テストを行います。機械式時計の内部に水が入ると故障につながるため、こうした防水試験は欠かせません。ただし時計の状態によっては防水テストを行わないケースもあります。

⑥最終確認

針の進みや音、リューズの動きなど、時計のすべての動作が正常であるのを確認した後、外観の確認や最終仕上げを行い、オーバーホールが完了となります。

定期的なオーバーホールが必要な理由

前章でご覧いただいたように、オーバーホールの一連の作業は非常に繊細な技術を要するものです。もちろん相応の工数も費用もかかります。
それゆえに「今のところ普通に動いてるし問題なく使えているから、時間もお金もかかるオーバーホールは故障するまでやめておこう」と考える方があってもおかしくありません。なぜ定期的なオーバーホールが必要とされるのでしょうか。

腕時計のオーバーホールは、ちょうど私たちでいう「定期健診」に似ています。
皆様も、定期的に健康診断に行き、体のあちこちを異常がないかチェックしますよね。その時は特に自覚症状がなくても、どこに病気の危険が潜んでいるかもしれません。定期健診で小さな異常を早期に発見できれば、大きな病気を防ぐ正しい対応をとることができます。オーバーホールもこれと同じです。

IWCをはじめとする機械式時計には大小様々な部品が多数用いられており、その数は多いもので200以上。これらの部品が精巧なメカニズムで組み合わさって動き、正確な時を刻み続けてくれます。
しかしその間、時計内部の部品は少しずつ、ほんの少しずつ、摩耗により劣化し続けています。歯車の回転軸のブレやかみ合いの不良、部品の曲がりや欠けなどがありますが、これは外見で分かるものではなく、時計の内部を丁寧に調べねばならないのです。

また、部品の摩耗を防ぐため時計内部の各所には潤滑油が使われていますが、この油も時と共に劣化・乾燥していきますので、摩耗を完全に抑えることはできません。
わずかな摩耗や狂いであっても、時計の正確性や機能性に影響します。これを放置しておくと劣化が進み、やがて明らかに時計の精度に狂いが生じたり、止まって動かなくなってしまったりします。
さらに時計の小さな隙間から汚れや異物、湿気が内部に侵入することがあります。これも故障の原因となりますが、基本的にオーバーホールでなければ取り除けません。

時計の動作に異常が見られないうちから、定期的なオーバーホールで消耗した部品の洗浄や交換や潤滑油の注油を行うことで、上記のような部品の劣化を抑え、大きな故障・トラブルを回避できます。
特にIWCなどの高級時計は精密性や耐久性に優れているため、正しいメンテナンスを継続すれば数十年にわたり使い続けることも可能です。

オーバーホールはどの周期で出せば良い?

オーバーホールの必要性についてはご理解いただけたかと思いますが、次に気になるのは、どのくらいの周期でオーバーホールを行えば良いかです。大事なことと分かってはいても、やはりお金のかかることですから、IWCを使い続けるために最低限必要な頻度というのは知りたいところだと思います。

オーバーホールの適正な頻度は、機械式時計とクォーツ式時計で違ってきます。

機械式時計の場合

一般的な機械式時計の場合、「3~5年に1度」のオーバーホールが適切とされています。最後にオーバーホールをしたのが5年以上前だという方は、ぜひ早々のオーバーホールをご検討ください。

ただし時計のご使用状況によっては、3~5年より短いスパンでのオーバーホールが望ましい場合があります。

日常的に長時間使っている場合

「毎日の通勤・通学時にいつも腕時計を使っている」など、日常的に長時間時計を身に付けている方は注意が必要です。時計は外気温の変化や湿気、磁気などに弱く、こうした環境に長時間さらされていると、通常よりも時計内部が早くダメージを受けている可能性があります。

アウトドアでの使用が多い場合

アウトドアでの使用は、海や川・プールの水、雨、汗などで時計を直接濡らす恐れがあります。時計内部に水が侵入してしまうと故障の原因となります。いくら防水機能があるといっても注意するにこしたことはなく、早め早めのオーバーホールが必須です。
また、時計を身に付けながらスポーツや激しい運動をしていると、その衝撃や振動で、外からは分からないダメージを時計内部に与えてしまうかもしれません。

長期間使用していない場合

IWC時計は高価なものですので、「使わないまま棚の奥にしまっている」といった方もあるかと思います。この場合、長期間放置している間に時計内部の油が凝固し、早く劣化してしまうため、時計にとっては望ましくありません。

クォーツ式時計の場合

IWC時計には、クォーツ式のモデルもあります。
クォーツ式時計はクォーツ(水晶)の正確な振動を利用した時計のことで、機械式時計に比べて内部機構がシンプルに作られています。そのため「クォーツ式時計はオーバーホール不要」という人もいますが、多数の歯車がかみ合って動いているのは機械式と同じですから、程度こそ違えど摩耗や劣化は起こります。
安価な量産型クォーツならともかく、IWCのような高級時計はしっかりオーバーホールを行って大切に使い続けたいものです。

クォーツ式時計のオーバーホールの頻度ですが、こちらは「5~7年に1度」が適切とされています。上述の通り機構がシンプルで部品数が少ないため機械式時計よりもスパンは長くなっていますが、防水パッキンなどの寿命は時計のモデルによりませんので注意が必要です。
クォーツ式時計は電池を内蔵していますので、電池交換を行うタイミングで機械内部も見てもらい、必要に応じてオーバーホールを行うという形が自然でしょう。

また上述した通り、時計のご使用状況によってはより早期のオーバーホールが必要であるのは機械式時計と同様です。

IWCのオーバーホール費用の相場は?

オーバーホールは、腕時計を歯車一つから分解・洗浄し、部品に異常がないかをチェックし、再び時計を元通りに組み立てるという大変緻密な作業を行います。作業者には様々な時計の内部構造に関する詳しい知識と、細かな部品を取り扱う確かな技術が不可欠で、とても一般の方にできるような作業ではありません。そのため、ほとんどの場合オーバーホールは専門の時計修理業者に依頼することになります。

修理業者に依頼すれば、当然に費用がかかります。そこでやっぱり気になるのは「IWCのオーバーホールはいくらかかるの?」という点でしょう。
IWCの公式ホームページでは、「コンプリートサービス(オーバーホール)」の料金は公開されていませんが、モデルやシリアルナンバーが分かればオーバーホール料金をすぐに計算・確認できるようになっています。

https://www.iwc.com/jp/ja/services/service-price-calculator.html

ここで実際に調べてみると分かりますが、時計修理店と比べると全体的に割高になります。もちろん正規メーカーならではの技術力や細かなサポートは申し分ありませんので、その価値を含めてご判断ください。

次に時計修理店の相場ですが、これも店舗によって様々な違いがあり、一様に「いくら」と言うのは難しいところがあります。ただ総じて言えるのは、正規店の半額程度の費用でオーバーホールを行っている店舗が多いという点です。できるだけ出費を抑えたいという方は時計修理店にオーバーホールを依頼するのが良いでしょう。

「安価な時計修理店だと、丁寧な仕事をしてくれないんじゃないか?」といった心配があるかもしれませんが、メーカーでも一般のお店でも、結局オーバーホールを実際に行うのは職人です。技術力の高い時計職人が在籍している修理店なら安心してオーバーホールを依頼して問題ありません。

オーバーホールを依頼する時計修理店の選び方

IWC時計を長く使い続けるためには、数年ごとの定期的なオーバーホールが欠かせないことがお分かりいただけたかと思います。そして、より低コスト・短納期でオーバーホールを行いたい方は、メーカーよりも時計修理店に依頼したほうがお得です。

そうなると問題になるのは「どの時計修理店に頼めば良いか?」です。できるだけ修理技術やアフターサービスのしっかりしたお店に頼みたいに決まっていますが、何しろIWCの修理・オーバーホールに対応できる修理店はたくさんありますので選ぶのが難しいかもしれません。
一般に、技術力が高く安心して任せられる時計修理店には次のような特徴があります。ご参考になさってください。

  • 修理実績が豊富にある
    修理件数や対応可能ブランドが多いほど、蓄積された修理技術や経験が豊富だといえます。また営業年数の長さも要注目です。
  • 多くの時計職人が在籍している
    より多くの優れた職人が店舗に在籍しているほど、高品質の修理をより早く安定的に提供できる修理店だといえます。
  • 修理保証がある
    修理保証がついていれば、万一オーバーホール後に不具合や故障があっても無償対応してもらえるので安心です。
  • 利用者からの評価が高い
    「Googleクチコミ」などで店の評判を確かめるのも良いでしょう。利用者の声は、絶対ではありませんが有力な判断材料になります。
  • 実店舗がある
    実店舗には、対面でサービスを受けられる安心感や信頼感があります。また店舗を持てること自体が安定した経営基盤の裏付けです。

IWCのオーバーホールなら時計修理工房へ

最後に、私たち時計修理工房についてご紹介させてください。
時計修理工房では、創業以来50年という長きにわたり、IWC・ロレックス・オメガ・カルティエ・タグホイヤー・ブルガリ・ブライトリングその他あらゆる時計ブランドの修理やオーバーホールを承っております。

おかげさまで全国からたくさんのお客様にご利用いただき、年間修理本数・約12000本という豊富な修理実績がございます。現在では東京・大阪に3店舗を構え、「時計職人に会える店」をキャッチフレーズに、腕利きの時計職人たちが日々皆様の大切なお時計の修理を手掛けています。
IWCのオーバーホールをお考えの方は、ぜひ時計修理工房にお問い合わせくださいませ。

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